以前のコラムで「期限を過ぎてしまった相続放棄」についてのお話をさせていただきましたが、今回は相続放棄を考える上での注意点をいくつかお話したいと思います。
法律上、相続人は被相続人(亡くなった人)が有していた財産を自動的に受け継ぐことになるのですが、相続人が被相続人の有していた財産を受け継ぐことを放棄することを「相続放棄」といいます。
相続放棄は家庭裁判所を通した手続きになります。
被相続人が多額の借金を残して亡くなったというようなケースでは相続放棄を考えなければいけませんが、安易に相続放棄をしてしまうと後々、後悔することもあります。相続放棄を考える上で、代表的な4つの注意点をあげたいと思います。
1、プラスの財産も引き継ぐことができなくなります
相続放棄をするとマイナスな財産(借金等)だけでなくプラスの財産(預貯金・不動産・株等)も引き継ぐことができなくなります。
相続放棄時にすでに判明している財産だけでなく、その後に判明した財産も引き継ぐことができません。被相続人が生前大事にしていたもの(宝飾品・骨董品等)や先祖代々受け継いできたものも相続放棄すると一切受け取ることができなくなってしまいます。
2、安易に相続財産に手を出してはいけません
「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、相続人は単純承認したものとみなす。」と法律で定められています。つまり、これ以後、相続放棄をすることができなくなってしまいます。
相続財産の処分とは、例えば
① 被相続人名義の口座からお金をおろし、私的に使ってしまった。
② 被相続人の高級腕時計を売却してしまった。
③ 被相続人名義の不動産や車を相続人名義に変更してしまった・・・等々です。
少しのお金なら大丈夫だろうと安易に使ってしまうと、相続放棄をする余地がなくなってしまいますので、相続財産に手を出してはいけません。
ただし、通常の範囲内での葬儀費用の支払いや壊れそうな家の修繕等は「保存行為」といって単純承認にはあたらないとされています。
しかし、単純承認に該当するかどうかはケースバイケースですので、一概に判断することできません。相続財産に手を出すとき(手を出さざる負えないとき)はその前に司法書士等の専門家に相談してみるがよいでしょう。
さて、ここまで2つの注意点を書いていきましたが、長くなってしまったので、続きは次回にしたいと思います。