相続放棄
相続放棄と連帯保証人
親族が多額の借金を負って亡くなった場合、その相続人は相続放棄を検討する必要がありますが、注意しなければいけないことは連帯保証人の問題です。実際に、相続放棄と連帯保証人の問題が生じるケースは以下の2つです。
① 被相続人(亡くなられた方)が第三者の連帯保証人になっていた場合
被相続人が第三者の連帯保証人になっていた場合、被相続人の死亡により連帯保証人としての地位は相続人に受け継がれます。この場合、相続人は相続放棄することにより連帯保証人になることを逃れることができます。つまり、連帯保証人としての借金の義務を負うことはなくなります。ただし、相続放棄は一部についてのみするということはできません。連帯保証人としての責任だけ相続放棄をすることはできないのです。
また、債権者から連帯保証人に対して督促がくるのは、通常、主たる債務者が支払いをしていない等の事情がある場合です。そのため、被相続人が第三者の連帯保証人になっているということは相続開始時にはなかなか判明しませんし、相続開始から何年も経ってから、債権者からの督促により判明するというケースもあります。
その場合、既に相続財産を遺産分割や処分してしまっているはずですので、その後、被相続人が第三者の連帯保証人になっていたことが判明しても、相続放棄をするということは難しくなります(参照「相続放棄の注意点」)。
相続人としては、相続開始時に被相続人の書類等を確認し、被相続人のプラスとマイナスの財産(第三者の連帯保証人になっていないかどうかを含め)をきちんと調査したほうがよいでしょう。
② 相続人が被相続人(亡くなられた方)の連帯保証人になっていた場合
相続人が被相続人の連帯保証人になっていた場合、相続人は相続債務とは別個の独立した債務(連帯保証人としての義務)を負っているので、相続放棄したからといって、債権者に対する返済義務を免れるわけではありません。
連帯保証人が債権者からの請求に対して、十分な資力がない場合には、債務整理(任意整理や自己破産等)を検討する必要があります。
上の2つのケースでみたように、相続放棄と連帯保証人の問題はケースによって、対処の仕方が異なります。対処の仕方を間違えると大きなトラブルに発展するおそれさえあります。当事務所では相続放棄の手続だけでなく、債務整理(借金整理)も広く扱っておりますので、お困りの際はまずはご相談ください
相続放棄を考えるときの注意点~その2
さて、今回は、前回の続き、相続放棄を考えるときの注意点の残り2つを書いていきたいと思います。
1、相続人の地位が他の人に移ってしまいます
相続放棄をするとその相続人は「相続人とならなかった」ものとみなされます。
例えば、Aの死亡により相続が発生し、相続人としては、Aの子Bのみ(Aの配偶者は既に死亡している)とします。
通常であればBがAの財産をすべて受け継ぐことになるのですが、Bが相続放棄をした場合、Aの相続に関して、Bは「はじめから相続人とはならなかった」という立場になります。それではAの相続人は誰になるかというと、Aの直系尊属(Aの父母又は祖父母)、直系尊属が既に死亡している場合には、Aの兄弟姉妹が相続人となります。
このように、相続放棄をすることによって、相続人の地位が他の人に移ってしまいます。自分が相続放棄をすることによって、他の親族に迷惑がかかることを気にして相続放棄をすることを躊躇する人もいます。
ケースにもよりますが、相続放棄をする場合にはその旨を他の親族にも話しておき、場合によっては他の親族と一緒に相続放棄を考える必要が出てきます。
2、やり直しがききません
相続放棄が家庭裁判所に認められると、「やっぱり止めた!」ということができなくなります(一部例外はありますが。)。
相続放棄には3か月という期限がありますので、特に期限が迫ってきているケースでは、安易に相続放棄をしてしまうという人がいます。安易に相続放棄をしたことによって、取り返しのつかないことになってしまうこともあります。この3か月という期限は理由があれば家庭裁判所への申立てにより伸ばすことができます。期限が迫っている場合でも慌てずに、一度司法書士等の専門家に相談してみるのがよいでしょう。
相続放棄といっても、ケースに応じて対応の仕方が異なってきます。適切な対応をしなかったことによって、後々困ったこと・トラブルになってしまうこともあります。相続放棄をお考えの方・相続放棄について不安がある方等、まずは当事務所までご連絡下さい。
相続放棄を考えるときの注意点~その1
以前のコラムで「期限を過ぎてしまった相続放棄」についてのお話をさせていただきましたが、今回は相続放棄を考える上での注意点をいくつかお話したいと思います。
法律上、相続人は被相続人(亡くなった人)が有していた財産を自動的に受け継ぐことになるのですが、相続人が被相続人の有していた財産を受け継ぐことを放棄することを「相続放棄」といいます。
相続放棄は家庭裁判所を通した手続きになります。
被相続人が多額の借金を残して亡くなったというようなケースでは相続放棄を考えなければいけませんが、安易に相続放棄をしてしまうと後々、後悔することもあります。相続放棄を考える上で、代表的な4つの注意点をあげたいと思います。
1、プラスの財産も引き継ぐことができなくなります
相続放棄をするとマイナスな財産(借金等)だけでなくプラスの財産(預貯金・不動産・株等)も引き継ぐことができなくなります。
相続放棄時にすでに判明している財産だけでなく、その後に判明した財産も引き継ぐことができません。被相続人が生前大事にしていたもの(宝飾品・骨董品等)や先祖代々受け継いできたものも相続放棄すると一切受け取ることができなくなってしまいます。
2、安易に相続財産に手を出してはいけません
「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、相続人は単純承認したものとみなす。」と法律で定められています。つまり、これ以後、相続放棄をすることができなくなってしまいます。
相続財産の処分とは、例えば
① 被相続人名義の口座からお金をおろし、私的に使ってしまった。
② 被相続人の高級腕時計を売却してしまった。
③ 被相続人名義の不動産や車を相続人名義に変更してしまった・・・等々です。
少しのお金なら大丈夫だろうと安易に使ってしまうと、相続放棄をする余地がなくなってしまいますので、相続財産に手を出してはいけません。
ただし、通常の範囲内での葬儀費用の支払いや壊れそうな家の修繕等は「保存行為」といって単純承認にはあたらないとされています。
しかし、単純承認に該当するかどうかはケースバイケースですので、一概に判断することできません。相続財産に手を出すとき(手を出さざる負えないとき)はその前に司法書士等の専門家に相談してみるがよいでしょう。
さて、ここまで2つの注意点を書いていきましたが、長くなってしまったので、続きは次回にしたいと思います。
期限を過ぎてしまった相続放棄
相続放棄の期限が「3か月」ということは一般の方にも結構知られていると思います。しかし、3か月の期限を1日でも過ぎてしまうともう相続放棄できないと誤解していませんか?
実際、3か月過ぎてから相続放棄の手続きを申立てても、認められるケースというのが珍しくありません。
民法では相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」とされています。この「自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは、社会通念上、死亡の事実を知り得た時とされていますが、形式的に判断するのではなく個別の事情を考慮して判断がされています。
よくあるケースは、被相続人が借金を残して亡くなったケースで、相続人が一切その借金のことを知らかなかったという事例です。
相続が開始してから3か月経過した後に、督促状が届いたという場合、3か月が経過しているから一律相続放棄できないとなると妥当なことではありませんよね。
借金の事実を知らなかったということは、相続放棄するかどうかの選択をする機会が与えられていなかったのですから、一律相続放棄が認められないのは妥当性を欠いてしまいます。
裁判所も様々な事情を考慮して相続放棄ができるか判断しますので、単に3か月が経過しているかといって諦める必要はありません。
もっとも、相続放棄の申立ては一度しかチャンスがありません。一度、裁判所に相続放棄の申立てを却下されてしまうと二度と申立てができなくなってしまいます。
3か月経過後に相続放棄の申立てを行う場合には、裁判官に「この事情だったら仕方がない」と思ってもらうことが必要になります。これにはテクニックが必要になりますので、専門家の助けを借りたほうがよいでしょう。
当事務所では今まで経験したノウハウを活かして、裁判所に提出する書類(事情説明書)を作成しています。
3か月経過後の相続放棄をご検討の方は、当事務所でも無料相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。