商業登記とは、会社や法人の情報を法務局に登録し、公に証明する制度です。企業の信用を確保し、取引の安全性を守るために不可欠な手続きであり、会社設立・役員変更・本店移転・会社の解散・資本金変更などの際に必要となります。
商業登記を適切に行わないと、取引先との信用問題が発生するだけでなく、法的なペナルティが課されることもあります。本記事では、会社設立・役員変更・本店移転・解散に関する商業登記の手続きやポイントについて詳しく解説します。
このページの目次
1. 商業登記とは?
商業登記は、会社の基本情報や変更事項を公的に記録し、法的に証明するための手続きです。商業登記の内容は、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)として法務局で取得でき、企業活動の信頼性を確保する重要な役割を果たします。
商業登記が必要となる主なケース
- 会社の設立登記
- 会社の役員の変更登記(取締役・代表取締役の就任、再任、辞任、解任)
- 会社の本店所在地の変更による、本店移転登記
- 会社の商号や目的の変更による、変更登記
- 会社の資本金の増資の登記
- 会社の解散清算の登記
2. 当事務所に相談の多い登記と手続きの流れ
① 会社の設立登記
会社設立登記は、法人として正式に会社を運営するために必要な手続きです。登記を完了しなければ、法的に会社として認められず、事業を開始できません。
会社設立登記の流れ
- 会社の基本事項を決定
✓ 商号(会社名)
✓ 事業目的
✓ 本店所在地
✓ 資本金の額
✓ 役員構成(代表取締役・取締役など) - 定款の作成と認証(株式会社のみ)
✓ 公証役場で定款の認証を受ける(合同会社は不要) - 資本金の払込
✓ 発起人の個人口座に資本金を振り込み - 法務局へ会社設立登記を申請
✓ 申請後、登記が完了すると正式に会社が設立される - 登記完了後、法人銀行口座の開設や税務署への届出を行う
注意点
- 会社設立登記には登録免許税が発生(株式会社は最低15万円、合同会社は6万円)
- 株式会社の定款は公証役場で認証をする必要がある(認証の実費代は最低3万円~)
② 役員の変更登記
役員変更とは、会社の取締役や代表取締役、監査役などの役員が交代・辞任・再任・解任した際に行う商業登記のことです。役員変更があった場合、変更後2週間以内に登記申請を行う義務があります。
役員変更登記の手続き
- 株主総会または取締役会で決議を行う
✓ 役員の選任・解任を決定 - 必要書類を作成
✓ 株主総会議事録または取締役会議事録
✓ 役員の就任承諾書や辞任届など
✓ 役員の印鑑証明書(ケースによる) - 法務局へ登記申請(変更後2週間以内)
- 登記完了後、登記事項証明書を取得して変更内容を確認
注意点
- 登記を怠ると、過料が科される可能性がある
- 正しい議事録を作成しないと、登記が進まない
③ 本店の移転登記
本店移転とは、会社の登記上の本店所在地を変更することです。本店を移転した場合、移転後2週間以内に登記申請を行う義務があります。
本店移転登記の手続き
同じ法務局管轄内での移転
- 取締役会または株主総会で決議
- 必要書類の作成(株主総会議事録・取締役会議事録・本店移転の決定書など)
- 法務局へ登記申請
異なる法務局管轄への移転
- 旧本店所在地の法務局へ登記申請
- 新本店所在地の法務局へ登記申請(1と2を同時に行う必要がある)
注意点
- 移転前と移転後の両方の法務局で手続きが必要(異なる管轄の場合)
- 会社の定款に本店所在地の記載がある場合、定款変更の手続きも必要
④ 資本金の変更登記
資本金変更とは、会社の資本金を増額または減額する際に行う登記です。増資によって資金調達を行う場合や、業績悪化により減資をする場合に必要となります。
資本金変更登記の流れ
- 株主総会で増資または減資の決議を行う
- 新株発行(増資の場合)または債権者保護手続き(減資の場合)
- 必要書類を作成(株主総会議事録・払込を証する書面など)
- 法務局へ登記申請
注意点
- 増資の場合、資本金の払い込みが必要
- 減資の場合、債権者保護手続きが必要(例外あり)
⑤ 会社の解散・清算登記
会社の解散・清算登記とは、会社を閉鎖する場合に行う登記です。会社を閉鎖するには、株主総会で解散を決議し、選任された清算人が、会社の財産を分配などして、会社を畳むために活動をします。
清算がすべて終わると、会社の登記記録(登記簿)は閉鎖されます。
解散・清算登記の流れ
- 株主総会で解散の決議を行う
- 解散した旨を官報に公告する(2ヶ月間公告する必要がある)
- 法務局へ解散の登記申請
- 清算人が未払金の回収や返済などを行い、残余財産を株主に分配する
- 決算報告を株主総会で承認してもらう
- 法務局へ清算の登記申請
注意点
- 官報公告が必須となる
- 解散時と清算時と2回に分けて登記をする必要がある
- 清算登記が完了すると、会社は閉鎖となる
最近増えている相談
最近、多い相談として、「法務局に勝手に解散登記を入れられてしまった」という相談が急増しています。
実は、株式会社の場合、最後の登記から12年登記をしていないと、「活動をしていない会社」と考えられて、解散登記を法務局の職権で入れられてしまうケースがあります。これを「みなし解散」と呼んでいます。
令和6年の1年間だけで、約27,000社の会社がみなし解散とされてしまいました。
もちろん、とっくに事業をやめてしまった休眠会社のような会社の場合にはやむを得ないともいえますが、実際には、問題なく事業を行っているにも関わらずに、登記を忘れていたためにみなし解散とされたケースも沢山あります。
一度、みなし解散とされてしまうと、その後、会社を継続させるためには急いで会社継続の登記を申請する必要があります。
当事務所では、「過料を受けてしまった」、「みなし解散の登記を入れられてしまった」とう相談も対応しておりますので、まずは、ご相談ください。
3. 会社登記の必要書類と費用
商業(会社)登記の主な必要書類
実は、会社登記は、会社の機関設計や定款の内容によって会社ごとに異なっており、「この登記はこの書類」というご案内が非常に難しいのが特徴です。
そのため、まずは、ご相談時にご用意いただくものとして、下記のものをお願いしています。
① 会社の定款
絶対必要ではありませんが、あった方が望ましいため、ご相談時までに探していただけると助かります。
② 会社の登記簿の情報
おそらく最新の登記簿が手元にあるという会社はかなり稀かと思います。そのため、最新の情報は当事務所でお取りしますので、会社の商号(名称)と所在地の2点を教えていただけますと助かります。
登記にかかる費用
登記には、登録免許税(印紙代)や司法書士に依頼する場合には報酬が発生します。
登録免許税(税率の目安)
- 株式会社の設立登記:資本金の額の%(ただし最低15万円)
- 合同会社の設立登記:資本金の額の0.70%(ただし最低6万円)
- 役員の変更登記(就任、再任、辞任、解任):1万円(ただし資本金が1億円以下)
- 会社の本店移転登記:3万円(ただし管轄をまたぐ管轄外移転の場合には6万円)
- 会社の目的変更・商号変更登記:3万円
- 会社の解散登記・清算登記:(解散時に39,000円、精算時に2,000円)
4. まとめ|司法書士に依頼するメリット
商業登記は会社他各種法人に関する一定の事項を「登記」という形で一般に公示することで、会社の信用ひいては世の中の取引の安全を守るためにとても重要な制度です。
しかし、登記申請は様々な添付書類が必要となる他、一言一句間違わないように申請しなければ登記が通らない等、普段の業務に追われている会社経営者様にとっては非常に煩わしい手続でもあります。
司法書士は国が唯一認めている商業登記の専門家です。当事務所では約10年近く登記業務に携わっている司法書士が担当しますので安心してお任せいただけると思います。
迅速に正確な登記を完了することをお約束します。会社のことでお困りのことがありましたら、是非ご相談ください。
また、「過料を受けてしまった」、「みなし解散の登記を入れられてしまったが会社を継続したい」とう相談は、他の登記より優先して対応もしておりますので、まずはご相談ください。